旅と句

鹿島紀行(7句)

鹿島紀行 行程

貞享4年(1687)8月 芭蕉44歳

 貞享4年(1687)8月14日、芭蕉が名月を見るため、門人曾良・宗波を伴い鹿島、潮来方面へでかけた旅。深川芭蕉庵から舟で行徳へ。陸路で八幡・釜ヶ井(谷)・布佐。夜舟で鹿島根本寺に至る。翌日、鹿島神宮に参詣し、芭蕉参禅の師といわれる仏頂和尚を訪ねて1泊し、雨間の月見をする。
 紀行文『鹿島詣』は、短編であるが風月の趣に溢れている。前半は〈月見の記〉でありながら、紀行文に重きを置く。後半は発句を一括し、月見の句と旅の句を分離する。芭蕉が本格的な紀行文を執筆するための出発となった重要な作品である。芭蕉の真蹟を元にして出版された二系統の刊本がある。


月はやし梢は雨を持ながら

寺に寝てまことがほなる月見哉

この松の実生みばえせし代や神の秋

刈りかけし田面たづらの鶴や里の秋

しづの子や稲すりかけて月を見る

萩原や一夜はやどせ山の犬

芋の葉や月まつ里の焼畑やけばたけ