第72回(平成30年度)芭蕉翁献詠俳句特入選作品 連句の部

2018.10.06

 青木 秀樹  靜 寿美子  鈴木  漠  西田 青沙 共選

 

特選

半歌仙『浮世の』の巻   兵庫県 つばさ連句会

八尾 暁吉女 捌

 

旅寝して見しや浮世の煤払ひ    芭蕉翁

 耳元ちかく冬の波音        八尾暁吉女

カフェテラスカラフルな椅子並ぶらん 城  依子    

 﨔大樹は枝を広げて        斎藤  桂

まんまるの月に願ひて描く夢     岡部七兵衛            

 身ほとりのものなべて爽やか       依子

村芝居石屋の親父名女形         暁吉女

 尼僧も混じるバックコーラス      七兵衛

頁繰る細きあの指気にかかり         桂

 大型犬はのほほんとして        暁吉女

栄町路面電車が停車する          依子

 ビール次々月に乾杯            桂

激論に汗の飛び散る午後八時       七兵衛

 国の未来を誰に託さん          依子

風の向き右も左も定まらず        暁吉女

 ふはりひらりと春のスカーフ      七兵衛

矍鑠と卆寿の恩師花の下          依子

 間々に聞こえるうぐひすの声        桂

  

      平成三十年五月二十六日 満尾 インターネット掲示板

 

 

入選

半歌仙『嵐山』の巻   富山県 いなみ連句の会

杉本 聰 捌

 

嵐山藪の茂りや風の筋         芭蕉翁

 納涼舟から船頭の唄           杉本  聰

団居して自慢の紅茶念入りに       北野眞知子

 額の猫図の薄目開けたる            聰

院展の搬入終へて仰ぐ月           眞知子

 木犀の香を辿る細道              聰

秋彼岸とつとつ誦経新発意          眞知子

 女ごころを擽られつい             聰

プロポーズ受けたその日に籍を入れ      眞知子 

あれよあれよと出世街道             聰

自家用機駆りて飛び立つ世界旅          聰

 年代物のワインしこたま          眞知子

凍月を背に荒城のシルエット           聰

 氷柱構えて剣士ぶる子ら          眞知子

また一人竹馬の友の訃報あり           聰

変らぬ味の木の芽田楽          眞知子

湯けむりに万朶の花の滲む郷           聰   

 春蝉を聞く古民家の縁           眞知子

   

   平成三十年六月七日 満尾 Eメール文韻

入選

半歌仙『留守の間に』の巻   埼玉県 あしたの会

宮本 艶子 捌

 

留守の間にあれたる神の落葉哉    芭蕉翁

 ぽつんと見ゆる杣の凍滝         宮本 艶子

饅頭で奉仕の人をもてなして       江森 京香

 出張までを子等と一時         三澤 律乃

中天に月は煌々湖照らす         高橋たかえ

 乾く匂いに稲架の連なり            艶

冬支度海岸線に添う家並             律

 ジパングで行く偽の相棒            京

ドンファンの麻薬盛られてあの世行き       た

 掛け替えてみる床の掛け軸           艶

耽読のエッセイに得し至福とも          律

 嫌がる犬にペアルック着せ           た

山脈の涼しさ抱き昇る月             京

 汗もしとどにしごく石段            た

日大のアメフト疑惑根の深さ           律 

混沌の代に蝿の生まれる            た

退院の祝の酒に花吹雪              艶

 かぎろいたてるドライブの道          京

   

   平成三十年六月七日 満尾 熊谷福祉センター

入選

半歌仙『ほととぎす』の巻   静岡県 伊東連句会「風」

杉本 弘子 捌

 

ほととぎす消えゆく方や嶋一ツ     芭蕉翁

 登山地図置く単線の駅          和田ひろ子 

額寄せ子らの相談まとまりて       半田 有杜

 パレットに溶く絵の具鮮やか      杉本 弘子

金の砂こぼれて月の大都会        角田 紀子

 サブウェイを出て虫売りの声      菅沼 不立

後になり先になりては秋遍路           杜

 セーヌ河畔に君を追いかけ           弘

好きなのよ自作の詩で告白す           紀

 猫は知ってる禁断の仲             杜

二合半の酒もてあます好々爺           ろ

 富山の薬待ちかねており            杜

早々と門を閉めたる年の宿            ろ

 吊るされあわれ鮟鱇に月            立

ジーンズの長き前垂れ蹴とばして         紀

音叉をたたく地下のスタジオ          弘

絶え間なく花降り続く宮の奥           立

 きな粉を添えてあんの草餅          執筆 

   

   平成三十年五月十七日 満尾 伊東市中央公民館

入選

半歌仙『まだ紫に』の巻   愛媛県 白水台連句会

大月 西女 捌

 

曙はまだ紫にほととぎす        芭蕉翁

 若葉萌えたつ早発ちの宿         大月 西女

一人子の夢に添ふのも親なりて      名本 敦子

 縫ひ目も粗き膝の繕ひ         岡田伊勢子

するすると島へ櫓を漕ぐ月見舟      杉山 豚望

 もつてのほかを入れるタッパー        西女

爽涼の縁に大黒御居処すゑ          伊勢子

 政治談義や嫁の文句や            敦子

なぜだらう日毎化粧が派手になる        敦子

 情を交はせる掻巻の内            豚望

襖絵の虎にじろりと睨まれて       向井由利子

 嵯峨野の竹の美しきメロディー        敦子

自撮棒かざし若者にぎやかに       大西 素之

 酔うて転んで小指骨折            西女

水槽のピラニアいつか増えてをり        敦子 

弥生山より届く陣風            伊勢子

花愛でて月の女神は降臨す           西女

 独座の父は春陰の中             敦子

   

   平成三十年四月二十日 満尾 道後白水亭

 

入選

和漢行脇起 半歌仙『風流のはじめや』の巻   東京都 桃夭榭

鵜飼桜千子 捌

          

風流のはじめや奥の田植うた     芭蕉翁

野禽緑陰休           鵜飼桜千子

老師原石磨          高橋  賢

少年硬球投              賢

月光は宇宙空間游ぎ来て         浅沼 小葦

古酒を呷れば笑ふロボット        永田 吉文

作新絹袱配          小田 英珠

色よき文が僧のふところ            小葦

メビウスの輪から出られぬ恋地獄         賢

ねむり薬が効かぬ夜もあり           小葦

樵路朧月照             吉文

漁舟春漣浮             吉文

室町の水墨真似る夏隣             小葦

 嘘のはびこる政治あきあき           賢

飛車落更破             英珠 

載重荷働牛          芳野 禎文

返り花埴輪の夢に語りかけ           英珠

雪晴登城楼             禎文

   

   平成三十年五月八日 満尾 京橋区民館

入選

半歌仙『夢よりも』の巻   愛媛県 愛媛県連句連盟

杉山 豚望 捌

 

夢よりも現の鷹の頼もしき       芭蕉翁

 風疼く日も真直ぐなる背        杉山 豚望

呼べばすぐ向かう岸より渡舟来て     大月 西女

 カメラバッグの角の擦りきれ      大西 素之

望月に松の影載せ隅櫓          向井由利子

逍遥すれば下駄の露けし        岡田伊勢子

鬼太郎が先回りする鮭の簗           素之

 〇番線に列車到着             伊勢子

駆落ちの落ち合ふ場所を間違へて        素之

 充電切れで燃え尽きる恋           素之

酒注ぐべく盃は縞模様            由利子

 色即是空月の涼しき             西女

友偲びマッキンレーにケルン積む        西女

 反魂丹を内ポケットに            素之

腹の中探れば闇の底深く           伊勢子 

香り豊かな母の蕗味噌           由利子

蛇穴を出でて初花見上げたる          豚望

 小社に立つ遊糸ゆらゆら           西女

   

   平成三十年七月十三日 満尾 道後白水亭

入選

半歌仙『ほしげ也』の巻   奈良県 あしべ俳諧塾

松本奈里子 捌

 

初しぐれ猿も小蓑をほしげ也      芭蕉翁

 炉端の句座に誘ふ友どち         松本奈里子

新刊のインクの香り楽しみて       谷澤  節

 お惣菜までネット注文         もりともこ

地を這ふか月も気付かぬ低周波        奈里子

 とぐろを解きて蛇穴に入る           節

大黒の鏝絵くつきり秋収           ともこ

 袖からちらり賽の刺青           奈里子

片恋は自由な風と強がりを            節

 ロゼのワインで嗚咽のみ込む        ともこ

タラップを降りる足取り三拍子        奈里子

 藤井聡太の進化止まらず          ともこ

疲れ鵜の静かに眠る月の籠            節

 夏かぜらしき住職の経           ともこ

地袋に水飴の壺かくし持ち            節 

親の苦言の今なつかしく          奈里子

分校の花の下にてクラス会          ともこ

 霞たなびく伊賀の山並             節

   

   平成三十年七月十五日 満尾 奈良市はぐくみセンター 文音

入選

半歌仙『あはれさひとつ』の巻   徳島県 鹿児島県連句協会

梅村 光明 捌

 

東にしあはれさひとつ秋の風       芭蕉翁

 力士好みの白き望月           梅村 光明

今年絹晴れ着の柄を決めかねて      田代洋里子

 ジグソーパズルピース投げ出し     村瀬  悟

京風の煮しめ極める出汁に凝り      藤崎眞理子

 電車通りを散水車ゆく         大西 朝子

黙祷に街静まりし原爆忌            光明

 小さき指もてひらく折鶴          洋里子

嫁ぐ日の後ろ姿に父願ふ             悟

 彼の写真をロケットに秘め         眞理子

染み付いたダブルベッドの芳しさ        朝子

 新婚旅行飛行船にて             光明

人形にドレス縫ひやる寒の月          洋里子

 火の見櫓で叩く半鐘              悟

靴ひもの結び目なほしいざ駆けん       眞理子 

デジタルで撮る初蝶の舞ひ          光明

能舞台狂言面に花篝              朝子

 かたびら雪の残る坪庭           洋里子

   

   平成三十年六月二十五日 満尾 文音

入選

半歌仙『かびたん』の巻   徳島県 徳島県連句協会

梅村 光明 捌

 

かびたんもつくばはせけり君が春    芭蕉翁

 上がりを逆に進む双六          梅村 光明

犬と猫桶もころころ転がつて       島田 正子

 シャッター通り人だかりする      濵本 紫陽

月今宵抗議の声の高らかに           光明

 蟹行文字蓮の実の飛ぶ            正子

伝統と菊師の粋を飾りつけ           紫陽

 恋の疲れを癒す膏薬             光明

呼び出しのベル鳴り止まぬスマホの灯      正子

 朝の挨拶宇宙基地より            紫陽

枢機卿関西弁を聴き分けて           光明

 国境を越え深き祈りを            正子

おほなゐの来るぞ来るぞと夏の霜        紫陽

 自然志向に売れる甘酒            光明

持ち歩く黒い鞄に核ボタン           正子 

うららかな日は車椅子押す          紫陽

その奥に政あり花の笑             正子

 茶番も仕込む弥生狂言            光明

   

   平成三十年五月二十七日 満尾 徳島市渭東コミュニティ・センター

入選

半歌仙『夢の跡』の巻   茨城県 水無月連句会

長澤矢麻女 捌

 

夏草や兵どもが夢の跡         芭蕉翁

 突き抜けてくる郭公の声         長澤矢麻女

親と子の収穫作業笑顔にて       宇都宮詮士

 肉とサラダでグラスワインを      根本美茄子

昏れなずむ川面に浮かぶ月見舟      城  依子

 紅葉踏みつつ湯宿への路            詮

遠囃し早くはやくと秋祭             矢

 髪に結んだリボン揺れてる           依

初恋は君が十歳僕十五              茄

 いくども脱皮今は鬼嫁             矢

盛り皿と並んだ徳利有田焼            詮

 潮の香りの馥郁として             茄

断捨離をすませ佇む丘の上            依

 寒月光が胸の奥へと              詮

政治家の失言多し皹薬              矢

洗って取れぬエプロンの汚み          依

寺町を埋めて花はたおやかに           茄

 各駅停車長閑なる旅             執筆

   

   平成三十年七月二十六日 満尾 インターネット

入選

半歌仙『水の音』の巻   茨城県 

城  依子 捌

 

楽しさや青田に涼む水の音       芭蕉翁

 菅笠を脱ぎしばし一服          城  依子

デジカメの写り具合を確かめて      小岩 菖蒲

 有名シェフの料理教室         福地なほ子

老松の幹の影濃き望の月         根本美茄子

 覗く小牡鹿眼やさしき         冨山 陽子

独り言いえば身に入む庵ぐらし         依子

 手紙の束を繰り返し読む           菖蒲

寄り添つて仰ぐ蒼天雲ふたつ         なほ子

 シャンパン交す新婚の旅          美茄子

公園のベンチでたどる夢の跡          陽子

 山の吊り橋音も無く揺れ           依子

月光裡氷柱が少しずつ伸びて          菖蒲

 初天神羽織ひっかけ            なほ子

米朝の核の指切り解け気味          美茄子 

スマホゲームに時を忘れる          菖蒲

鳥ばさと翔ち湖に花散らす           陽子

 春のかたみの淡き黄昏           なほ子

   

   平成三十年七月二十日 満尾 インターネット

入選

半歌仙『塩鯛の』の巻   茨城県 水無月会

後藤 算子 捌

 

塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店       芭蕉翁

 品選びする着ぶくれの祖父       後藤 算子

自転車を気の向くままに走らせて     上条 洲紅

 隠れ沼へと続く木道          大山とし子

月昇る頃ステージはジャズオンリー       算子

 グラスに満たすボジョレーヌーボー      洲紅

女子旅は紅葉かつ散る北の宿         とし子

 良縁寺の僧のにこやか            算子

気がつけば貴方と共に半世紀          洲紅

 妻を交換文豪の恋             とし子

ピロリ菌ぴくぴく胃の腑痛み出し        算子

 年金暮らしかさむ医療費           洲紅

梅雨明けの月の白さを仰ぎたる        とし子

 藤椅子の猫爪を研ぎだす           算子

笙の音のいずこともなく聞こえ来て       洲紅 

姉も妹も雛流しへと            とし子

人の世の栄枯見つめし花大樹          洲紅

 春光あびる四囲の山々            執筆

   

   平成三十年七月二十七日 満尾 インターネット

入選

半歌仙『雲の峰』の巻   茨城県 夢々連句

三輪 慶子 捌

 

湖や暑さを惜しむ雲の峰        芭蕉翁

 風の流れに薄羽蜉蝣          三輪 慶子

図書室に自作の絵本寄贈して      後藤とみ子

 行つたつもりで旅のカタログ     柳田 宏子

名月に遺産の森のざはざはと          と

 めつたやたらに走る瓜坊           慶

稲架掛けを終へて達成感に満ち         宏

 会ひたき時に逢へるうれしさ         と

ハネムーン北欧巡る豪華船           慶

 人脈広げ取引の増し             宏

ツイッターで世界は動く世の中に        宏

 IPSへ期待ふくらむ            慶

一人立つ火の見櫓に月の光ゲ          と

 青年会は酒と鴨鍋              と

盛り上がる宮部みゆきの江戸噺         宏 

パッチワークで作る壁掛           慶

名刹に雅楽の調べ花吹雪            と

 長閑に暮るる茅葺きの里           宏

   

   平成三十年五月二十八日 満尾 東京ウィメンズプラザ

入選

半歌仙『夏木立』の巻   茨城県 水無月連句会

高木 遥子 捌

 

先たのむ椎の木もあり夏木立      芭蕉翁

 郭公の声運ぶ山風            高木 遥子

久々に五人の茶事の楽しくて       長澤矢麻女

 床の間に置く手びねりの壺       上条 洲紅

どこまでも月はまどかに澄みわたり    宮本 茂登

 飛沫をあげて鮭上るころ          矢麻女

み仏の微笑に遇へり黄落期           遥子

 クリムトの絵のやうにキスして        洲紅

添ひとげてあなたやつぱりダンデイな     矢麻女

 空の青さも雲の白さも            茂登

古里の信州訛懐かしく             洲紅

 友の来ればとつときの酒           遥子

凜として闇をそびらに寒の月          洲紅

 暖炉とろとろ猫はうとうと         矢麻女

園庭の児等のおしゃべり他愛なく        茂登 

ひたすら願ふ戦無き世を           洲紅

咲き満ちてさゆらぎもせず花大樹       矢麻女

 羽化始めたる蝶の静かさ           茂登

   

   平成三十年七月十八日 満尾 石神コミュニティセンター

入選

半歌仙『玉霰』の巻   石川県 北陸筑波連句会

高見よ志子 捌

 

いざ子ども走りありかん玉霰       芭蕉翁

 ほころび初めし辻の早梅         高見よ志子

複雑な史料やうやく読解いて        中村 清子

 番茶に添ふる軽き煎餅          密田 妖子

鍬洗ふ小川照らして月昇る         池田みち子

 二百十日はおだやかに暮れ        瀬戸 瑞枝

スカイツリーはるかかなたに雁の空       よ志子

 はにかみながら贈るネクタイ          清子

信号を待つ間も指をからませて       村戸 弥生

 誘はれて出る日曜の弥撒           よ志子

街宣車派手に軍歌を流し来る           瑞枝

 塀の中から吠える猛犬             弥生

月涼し星の一つを侍らせて            清子

 縁に転がるもぎたての瓜           よ志子

長生きの話題肴に酌み交はす          みち子 

祝ひ膳には鯛の空蒸し             妖子

靄はれて伊賀の盆地は花盛り           瑞枝

 あちらこちらに畑打つ人            弥生

   

   平成三十年六月六日 満尾 密田宅